漫画「ゴミ屋敷とトイプードルと私(転落女子地獄 蜘蛛の巣貧困の収録作)」は、アラサーなのに『読モだった20代前半キラキラ女子』のつもりでSNSの中の自分に命をかける女・明日香が主人公です。
美人でおしゃれ、素敵だともてはやされるのが生きがい。
ネットの中の素敵なワタシ、になりきるためなら借金まみれでも平気。
犬ネタでコメント集めをして、用済みになったトイプードルはドロドロの汚部屋の中で虐待。そんな女が最後に行き着いた地獄は・・・
「ゴミ屋敷とトイプードルと私」のあらすじ
20代前半までは、読モをやっていたほどのかわいらしい容姿で男たちにモテモテで、どんな贅沢もさせてもらった明日香。
SNSの中でも『明日香さん素敵! すっぴんでもキレイ』と、キラキラ写真をアップするたびにコメントが入り、満たされる。
かわいいは正義、好きなことをして生きるキラキラ女子でいる限り、人生はイージーモードで輝いて生きられる。
ブスで地味な姉の夫だって、「明日香のほうがかわいい」と簡単におちた。
だから、どんな無理をしてでも美人で素敵な顔に加工して、400万円もつぎこんでブランドを手に入れたり、高級ホテルでのおしゃれな食事写真もアップしてきた。
コメント受けがいいから、という理由だけで30万円もするトイプードルを買ってきて、『新しい家族のトイプーのソラ君です♡』と、「ペットを可愛がる素敵なわたし」を演出。
リアルの明日香はすでに34歳。シミやシワが見えてきて、鏡を見るのが大嫌い。
そして、家事も嫌いで犬の世話なんてめんどくさすぎてやってられない。
「動くなっ、このバカ犬!」
部屋の中はブランド品の箱が散乱し、散らかり放題で写真を撮るときにじっとしてくれないソラにイラついて怒鳴る。
会社では10歳年下の後輩・サヤと仲良しで、おしゃれ女子生活の仲間として年の差を感じない。
「徳井さん、明日香センパイのこと、イイって言ってるらしいですよ」
女子社員の憧れの徳井は年下だったが、悪い気はしない。
まだまだモテる私、を実感して気持ちがいい。
「ゴミ屋敷とトイプードルと私」の見どころ
30代でも、いつまでもキラキラ輝いている素敵な私、と思いこんでいる明日香。
その思い上がりが父親が倒れて金銭的に援助してくれる存在がいなくなったのをきっかけに転落していくところが見どころです。
ゴミ屋敷の中で汚物と横たわっていたトイプードルが母と姉に発見され、見栄を張って後輩におしゃれなランチをおごったつもりがカード使用停止で恥をかく。
カードの支払いに追われて「ハゲだぬき」を頼ろうとするも、当てがはずれたうえに写真を拡散されて「Aさんって誰でもいいんだ〜」と社内の笑いものになってしまいます。
さらに追い打ちをかけるように、表面上はヨイショしてくれていた後輩・サヤがじつは徳井の彼女で「ふたりでババアのSNS見て笑っていた」とわかり、明日香は精神崩壊寸前に。
地味な姉による復讐、というラスト
明日香には地味でしっかり者のお姉さんがいました。
「救いようのない馬鹿な子」
幼いころから「かわいさ」だけでチヤホヤされ、やりたい放題に生きてきた妹に、夫まで取られた姉の復讐。
お金を黙ってだしてくれた両親も、男たちもいなくなり、最後の居場所だったゴミ屋敷さえ姉の般若の顔で締め出され・・・
「ゴミ屋敷とトイプードルと私」の感想
若さと美しさは永遠ではない、ということまざまざと見せつけられるお話。
明日香はからっぽで、何もなくなり、残ったのは無残な醜い自分とスマホの画面越しのSNSの中で「キラキラ女子」だった写真だけ。
インスタ映えを気にするあまり虚構の自分を作り出すのに熱中し、鏡の中の老いていく自分と幻想のSNSとの区別がつかなくなっていく明日香が、愚かといえば愚かですがアラサー前後の人にとってはギクリとする話でもあります。
自分はアラサーとしてわきまえているし、と頭で考えていても「年よりもまだ若く見られるもん」とひそかに思っていたり、「女の子」だという意識が抜けない、ということはないでしょうか。
明日香のように自己顕示欲がなければSNSでアピールする必要もありませんが、年相応にふるまわないとこんなにイタいんだな・・・と他人事に思えない内容でした。
ゴミ屋敷シリーズ続編!