榎本由美先生の漫画「セルフ・ネグレクト~ゴミ屋敷、ホームレス、ひきこもり」は、社会から転落した女たちを描く闇だらけの短編集です。
アイドルの追っかけで現実逃避しているうちにゴミ屋敷に暮らすようになった女。
借金地獄の果てに、ホームレスに転落した主婦。
パラサイト生活の末、肉塊のようになり30年引きこもり続けた女の末路。
ゾワッとするような3編の物語をご紹介します。
「セルフ・ネグレクト~ゴミ屋敷、ホームレス、ひきこもり」収録作
「ゴミ屋敷の女」のあらすじ
二次元やアイドルにしか夢中になれない女・街山葉子。現実の男は醜くて嫌いだけど、アイドルのリョウだけは別。
東京へ出て、派遣をしながらの追っかけ生活が始まった。彼に夢中になるあいだに、気がついたらアラフォー。
派遣契約も切られ、養ってくれる相手を見つけて婚活しても、適齢期を過ぎたブスなど誰も相手にしない。無気力になり、何もしたくなくなった葉子は部屋にゴミをためて埋もれるようになっていく。
「ホームレス主婦」のあらすじ
婚活パーティーで知り合った男性と結婚し、マイホームも手に入れて幸せいっぱいだった幸枝。
ケチでうるさい姑に仕えない旦那にストレスがたまり、外でレンタル彼氏と遊んで借金をつくってしまう。払いきれない借金をごまかすため、家を出た幸枝は、落ちるところまで落ち、ホームレスに・・・
「ひきこもりを30年続けた女」のあらすじ
美緒は思春期に入るころから引きこもるようになり、日に日に太っていった。パソコンの前で食べては寝るだけの生活。30歳をすぎるころに父親が倒れて、糖尿病をわずらうようになった。
そして引きこもり生活30年目。唯一の命綱であった母親が帰らぬ人になり、醜い肉塊になった美緒は食事を作ってくれたり世話をしてくれるひともいない環境に初めて放り出され・・・
まとめと感想
ひょえぇ~~~!!と、ぞわぞわするようなお話の連続。
アイドル追っかけの末に年食って、どうにもならない粗大ごみに成り果ててしまったゴミ屋敷女の話もすごかったし、世間知らず過ぎて闇金のエジキになってホームレスに転落した主婦もひどい。
けど、一番ひどかったのは「ひきこもりを30年続けた女」ですね。
ごく普通の家庭に生まれ育ったのに、どこで何を間違えたのか、部屋に閉じこもる生活から抜け出せずに、牛のように肥え太っていき醜悪な肉塊に。
両親が健在なうちは、そういう生活もできて甘えていられたけれども、親もいずれは老いて去っていく。
こういう優しい両親って、かえって引きこもりをダメにしてしまうものなのかもしれません。
毎日、おいしい食事をつくって三度三度食べさせて、本人はゴロ寝しながら一日中、漫画読むかアニメ観るか、ネトゲやネット三昧なんて・・・脳みそ腐っちゃいますよ。
よく、甘やかしすぎるのも本人の自立をさまたげるという意味でネグレクトになるって言いますよね。
多少厳しくても、「さっさと外に出て働けぇ〜〜〜!」と追い出されれば、彼女もまともな生活に戻れたと感じます。
「何も生み出さないバケモノ」とまで、妹にののしられた引きこもり女の末路・・・。
歩くことさえままならないくらいに太ってしまい、ひとり孤独に狭いアパートの一室に放り出されてどうやって生きていけるのか。
パラサイトシングルの悲惨な未来がこれでもか、と強調されておりゾワゾワが止まりません。
ゴミ屋敷の、大量のコバエやゴッキーがぶわぁーっと出るシーンも鳥肌モノ。
普通の生活からスタートした彼女たちが、なぜ転落していったのかが事細かく描かれ、どんな人にも起こりうる出来事だ・・・と他人事に感じられませんでした。
こちらの記事もオススメです